某所の≪歌う会≫で、己の声域の限界を実感した。
ある歌を適当に歌い始めたところ、低音域の音を出すことが出来ず、改めて高めに移調して、高低両域ともカヴァーすることが出来たのだが、どちらも結構キツかった。
その歌は「国境の町」という古い流行歌である。当方うろ覚えながら、懐メロとして何とか大きく外さずに歌えた、と思う。
某所では参加者一人一人にリクエスト曲を訊いて、皆で歌う方式を取っている。ただし、何でもリクエストできる訳ではなく、所定の歌詞集の中からお気に入りを選ぶこととされている。歌数は精々5,60曲だ。
童謡・唱歌の外に若干のポピュラー系、歌謡曲系が収録されており、そこに何故か「国境の町」がポツンと納まっていて、目立ったものだからリクエストしてみたのだ。講師の声楽家は全く知らない歌だという。そこでリクエストした当人が勝手に調を探って歌い始めたわけだ。
講師は、初めて耳にする歌でも、いわゆるコードを直ぐに探知するのだろう、器用にピアノ伴奏を弾いてくれる。
年寄りの集りだから、この古い歌を何人かは覚えていて、唱和し、無事曲尾に辿り着いた。そこで聞こえた感想第一声は、“高いところから低いところまで大変な歌ですね”というものであった。
確かに当方もそれを実感したので、歌う音域の幅を移動ドで勘定したところ、高いドから2オクターヴ近く下のミまでであった。
一般に歌曲で必要な音域幅は精々2オクターヴ程度であるとはちょくちょく耳にするところだ。それを自分で確認したことは無いが、この説に従えば、大変な歌を期せずして選んだものだ。
講師が“誰が歌ったのか”とみんなに問いかけたが、誰も知らなかった。ネット検索したら、彼の有名な東海林太郎の持ち歌だった。古い音源を聴いてみると、彼はヘ長調で歌っている。当方はイ長調であった。
齢の所為で、低いラも満足に出せなくなったことに些かショックを受ける。