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Channel: 愛唱会きらくジャーナル
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梅雨の晴れ間~日の光(北原白秋)~日光の(多田武彦)

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今年に入って、北国のさくらの会で、混声合唱組曲『柳河風俗詩』(北原白秋作詞、多田武彦作曲)の中の「梅雨の晴れ間」を練習している。あと2週間ほどでコンサート本番、ア・カペラで歌うことになっている。
 
前の「柳河」の時もそうだったが、百年以上も経た歌詞は今のお年寄りでも理解に手こずるので、参考資料として若干の解説を付して、詩の原文を印刷、配付した。
 
数日前、その資料に目を通していて、“ミスプリ”に気付いた、と思った。「梅雨の晴れ間」第7行(第2節第3行)が“青い空透き、日の光”となっていたのだ。歌い慣れた(と言うより、聞き馴れた)歌詞は“青い空透き、日光の、”だ。
 
資料は今評判の悪いコピペで作成したから、ミスプリを犯したのは引用元サイト(青空文庫)の入力者ということになる、と思った。
 
何か釈然としないまま数日が過ぎて、やはりそのまま捨て置く事が出来ず、詩の原典に当たってみた。ただし、白秋の詩集『思ひ出』の原本となると、図書館での閲覧にも手間、暇が掛るので、取り敢えず、信頼できる全集もので間に合わせた。
 
『白秋全集 2』(1985.4.5発行 岩波書店)が『思ひ出』の巻である。「柳河風俗詩」の「梅雨の晴れ間」は、255頁から 256頁にかけて掲載されている。問題の第7行は“青い空透き、日の光”となっている。我が資料のミスプリではなさそうだった。
 
念のため、複数ある刊本の間の本文異同をまとめた「校異」のセクションにも目を通したが、“日の光”については記載が無かった。権威ある岩波本でここまで調べれば十分だろう。
 
「梅雨の晴れ間」の原詩で“日の光”となっているものが、楽曲として世に出る時に“日光の”と変わったのだ。(出版過程の)単純ミスなのか、作曲者・多田武彦による意図的な改変なのか、既に誰かが解明済みだろうか。
 
第7~8行は次の通りだ:
 
青い空透き、日の光、
七寶(しつぽう)のごときらきらと、化粧部屋(けしやうべや)にも笑ふなり。
 
“日の光”を“日光の”に変えると、歌う際に“にっこうの しっぽうのごと”とライミング効果が発現する。それも一興だが、まさかそのためだけに原詩を書き変えるとも思われない。
 
インタネット公開されている合唱音源を幾つか試聴したところ、すべて“日光の”と歌っていた。面白いことに、そのようなサイトに付記された歌詞が“日の光”となっている場合がある。歌詞をコピペしたことが明らかだが、異同に気付かなかったようだ。
 
“日光の”と正しく入力されたサイトも勿論ある。コピペの際に、気を利かして訂正したのかも知れない。実は、当管理人も、一旦は訂正したのだ、恥ずかしながら。
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