台風21号による各地の被害の報の余韻も収まらないうちに北海道で起きた大地震は短絡的な連想を催す。“台風が地震を誘起したのではないか”と。
観念的には、台風通過時の気圧変動(主に気圧低下)が地球表面に影響を及ぼすことは明らかであり、問題は、その影響が量的に取るに足るほどのものであるかどうかだ。
またまた安直だが、ネット検索してみると、海外の大学での調査結果がヒットする。台風(低気圧)がもたらす豪雨によって(山地、傾斜地の)表土の流失があると、その下部にある断層の拘束が緩み、動き易くなるという論理らしい。
あまり感心しない論理構成だ。しかも、それらの根拠データとして、台風後数年の大地震が列挙されている。これでは台風と地震の因果関係を主張するのは無理だろう。
別の調査結果として、台風がスロー地震を惹き起こすことで、巨大地震の発生を抑制しているとの説も流されている。台風とスロー地震との因果関係が認められるかどうか、時系列データの読み方次第に掛る点は前説と同様だ。
当方としては、低気圧により特定地域の地表に掛る荷重が減少し、その地下の断層に対する拘束が弱まることにより地震が誘発されるという筋書きが好ましいのだが、そのような事例は報告されていないようだ。
因みに、今回の台風21号が震源付近を通過したのは地震発生のほぼ24時間前と推定される。
この時間差での両現象間の因果関係を立論するには、気圧低下による地殻変位の時間的推移が確認されなければならない。静的解析ではなく、動的解析が必要であり、専門研究機関の出番だ。