昨日は来たる28日の訪問コンサートに備えての練習を行なった。月1回だけの練習の中に沢山の曲を詰め込むので、大まかに音合わせが出来れば善しとする。今回は特に欲張った内容で、結局割愛せざるを得ないものも複数あった。
辛うじてお浚いできた一つが、小林愛雄/小松耕輔「帝都復興の歌」で、この歌については当ブログで何回も言及している。関東大震災記念日前のコンサートに於いて、その復興支援ソングを披露しようとの魂胆である。単純なメロディーなので、音取りに問題は無い。
その作詞者である小林愛雄(1881年11月30日 - 1945年10月1日)に少し注目してみた。一般に名を知られた所謂メイジャーな作詞家ではないと思うが、意外に活躍しており、実績を残している。解り易いのは「恋はやさし野辺の花よ」だろう。当方は殆ど歌った記憶が無いが、知名度の高い歌だ。
恋はやさし野辺の花よ 小林愛雄
一、 恋(こい)はやさしい 野辺 ( のべ )の花 ( はな )よ 夏 (なつ)の日 (ひ)のもとに 朽 (く)ちぬ花 (はな)よ
熱 ( あつ )い思 ( おも )いを 胸 ( むね )にこめて 疑 ( うたが )いの霜 ( しも )を 冬 ( ふゆ )にもおかせぬ わが心 ( こころ )の ただひとりよ
二、 胸(むね)にまことの 露 ( つゆ )がなけりゃ 恋 (こい)はすぐしぼむ 花 (はな)のさだめ
熱 ( あつ )い思 ( おも )いを 胸 ( むね )にこめて 疑 ( うたが )いの霜 ( しも )を 冬 ( ふゆ )にもおかせぬ わが心 ( こころ )の ただひとりよ
「恋はやさしい野辺の花よ」でネット検索すると、「恋はやさし野辺の花よ」のことかと問い返される。文語体の題名が正式なのだろう。そう思って歌詞を読むと、“恋はやさしい 野辺の花よ”と口語体が現れる。“熱い思い”然り。要するに、文吾・口語混交体だ。
歌詞の意味も当方には解りにくい。全体としては、≪我が心の恋の思いは強く、くじけない≫と言っているようだが、“恋(こい)はやさしい”、“わが心 ( こころ )の ただひとりよ”など、意味不明である。
なお、諸解説によれば、これは訳詞だそうだが、原詩からはかなり乖離しているとも言う。
いずれにしても、“柔らかい”内容の歌詞であり、「帝都復興の歌」の“硬さ”とは対極にある:
帝都復興の歌 小林愛雄/小松耕輔
陽は照る瑠璃の空の下悪魔の群れは跡もなし 若き光のさすところ大地も人もよみがへる
今、新しき土の上こころを堅く結びつつ、若き生命の輝きに真理(まこと)を目指し進みゆく
今、音を合はせ槌は鳴る最後の勝利望みつつ強き力の寄るところ不滅を誇る家を建てん
陽は照る瑠璃の空の下怪しく暗き影はなし清きわが世のあるかぎり 世界に誇る街を建てん
題意に添って適切に作詞する技術は、さすがである。