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Channel: 愛唱会きらくジャーナル
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こんどこそ!わかる数学 ~ 無理数の無理数乗 ~ 直感を欺く

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図書館の書架に見付けた≪新井紀子「こんどこそ!わかる数学」(岩波書店2007.2)≫を読んだ。本当に“数学が解る”ようになるなどと夢想した訳ではないが、素人向けに気の利いた内容なのだろうと期待した。宣伝文句によれば次のような本だ:

 
≪小学校・中学校時代には,算数・数学に興味関心を持つどころか大嫌いだったという著者.それだからこそ,大学は法学部に進んだのに,なぜか予想に反して数学者になってしまう.そんな著者が自身の悲惨な経験を踏まえ「もし中学生に教える機会があれば,こんな教え方をしてみたい」と思い立って書いたのがこの本だ.数学イメージが変わる.≫
 
中学レベルだと言うが、“背理法”、“有理数・無理数”、“逆関数”など、60年前に教わったとは記憶していない高級な概念が述べられている。著者流の教育ではこれらを早い段階で教えるべきだということなのだろう。
 
“有理数・無理数”に関連して、(√2)(√2)  が有理数か無理数かという話題が取り上げられている。こんな高等な問題も著者流教育に掛れば中学レベルでも取り組むことが出来るのだろう。
 
直感的には、(√2)(√2) は無理数である。こんなものが有理数である筈がないと思う。だが、証明せよと言われるとたじろぐ。それこそ“背理法”で何とかするのだろうと想像するが。
 
意外なことに、(√2)(√2) が無理数であることは最近ようやく証明されたのだと著者は言う。つまり、一見簡単そうなこのことが、実は専門家にとっても非常に難しい問題なのだ。
 

その証明法は勿論述べられていないが、話題として、( (√2)(√2) ) (√2)という巧みな発想が紹介されている。これは2 に等しくなるので、“無理数の無理数乗”が有理数になり得る例なのだ。直感には騙され易いと心しなければならない。

 
本書出版時の書評が≪朝日新聞(朝刊)2007311日≫に載っているそうだ。
 

ところで、連想として、“超越数の超越数乗”など類似の問題が浮かぶが?例の、美しくも不思議な“オイラーの等式”eiπ + 1 0に鑑みると、これまた直感だけでは足許をすくわれそうだ。


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