素数遊びの中で書名を見掛けた「ABC予想入門」(黒川信重・小山信也著 PHP研究所 2013.4)が気になり、図書館から取り寄せた。新書版210ページ余りで、読み易そうな印象だった。
しかし、入門とは言っても、テーマが≪ABC予想≫という数学上の超難問であれば、一筋縄で行く筈も無い。記述は簡明であるが、内容は説明抜きで高度に専門的な部分が多い。結局、本題のABC予想に入る前の準備段階にある素数関連の話題を多少楽しませて貰った。
≪第1章 数学の予想とは≫の中に、“対称素数”が例題として取り上げられていた。当欄6月17日付≪雨季閑居~読書~数字遊び≫で対称型と呼んだものの一種である。数の表記は、通常、十進法によっているが、3進法、7進法など自由に使った方が有用かつ面白いことなど、大いに参考になる。
素数が暗号システムの根幹に位置しており、現代社会を支えていることはよく知られているが、その原理を具体的に説明しているのも貴重だ。一般書では抽象的な解説が普通であり、イメージを掴みにくいのだが、本書では一応の理解を得ることが出来る。
逆に、数学者の流儀が直に現れて素人解りしない部分も少なくない。
例えば、≪1以外の自然数Pが素数であるとは、「P=A・BとするとAまたはBはP」をみたすことである≫との定義が提示されている。その通りなのだろうが、地の文で述べる≪自然数のうちで1より大きな2つの自然数の積に分解できないもの≫のほうが遥かに解り易い。