推薦的な書評に誘われて、ハンス・クリスチャン・フォン・バイヤー/著松浦俊輔/訳「QBism 量子×ベイズ-量子情報時代の新解釈」(森北出版 2018.3)を読んだ。やや思想論に偏した内容で、退屈な部分は飛ばした。
≪量子物理学は、観測前の物質の状態については何も語らない≫という一言が大いに気に入った。理論によって明示される量子的状態は確率的イメージであり、それが一旦観測されると固定的状態になるというような量子論には悩まされるのだが、それを解釈の問題として鮮やかに解決してくれているように思われるのである。
要するに観測前の状態は判らないのだという、極めて常識的解釈で、量子論の奇妙な結論を受容し易くしてくれる、言わばコロンブスの卵だ。こんなことで悩みが解決されるというのも、些か拍子抜けではあるが、とにかく、観測前の≪シュレディンガーの猫≫が生死の重ね合せという奇妙な状態にあって、観測したとたんに生か死かに固定されるのだという不思議な見方から解放されるのは有難い。
その考え方が≪ベイズ確率≫と何故結びつくのかについてはイマイチ理解しなかった。飛ばし読みの所為だろう。ベイズ統計などという分野については半世紀近く前に経済学(あるいは経済数学)の教科書(洋書)で学んだ記憶がある。その時は何も奇異な(あるいは特殊な)印象を持たなかった。要するに当たり前の理論だと思った。頭が柔軟だったのかもしれない。
ベイズ確率は、時々話題になる≪モンティ・ホール問題≫の鍵でもあるらしい(ニューヨークタイムズの数学~モンティ・ホール問題~ベルトランの箱のパラドクス 2016/10/9(日) など)。