続く5月号を月遅れで読んだら、≪東大教師が新入生にすすめない本 その二≫というのが載っていた。書いたのは、ひと捻りもふた捻りもしたエッセーを得意とする佐藤康宏先生(日本美術史)で、ご担当の連載[日本美術史不案内]の第108とある。
≪その二≫とあるから≪その一≫が先行している筈だが、見落としたようだ。検索すると、昨2017年5月号目次に、“ [日本美術史不案内]96 東大教師が新入生にすすめない本”があった。
今回佐藤先生が≪すすめない本≫として推薦したのは、①原口統三『二十歳のエチュード』と②中島らも『今夜、すべてのバーで』の2冊である。
原口は、(旧制)第一高等学校の学生で、ランボーを実践的に読もうとし、自らの詩をすべて焼却し、逗子の海に入水自殺したのだそうだ。『二十歳のエチュード』は、彼が友人に出版を託したノートだという。自殺した学生の遺著となると、それを新入生にすすめる教師はいないだろうと想像されるが、読めば思考を刺激し、思索を促すほどの内容なのだろう。
中島らもは、“泥酔し、階段から転落して脳挫傷で逝った”“緩慢な自殺を望んだ”人だと述べている。『今夜、すべてのバーで』は、アルコール中毒についての文献を読み漁りつつアルコール中毒になった男が主人公の小説だそうだ。
どちらも、文部省や教育委員会の御推薦を受ける良書には入らない、むしろ危険書の部類なのだろうが、実社会での確かな判断力を身に付けるには、問題提起のある本も読むのが善いとのお考えで、佐藤先生は≪すすめない本≫を巧みに推薦したようだ。
老生も遅まきながら読んでみようかな。