図書館の目録で、好田順治「素数の不思議」(現代数学社 1999.3)が面白そうに思われ、借りて読み始めた。記述が簡潔で、様々な話題が手っ取り早くお浚いできるのは便利だ。
しかし、気を付けて読むと、正確性に疑問が生じて来た。例えば、≪素数の英語は、prime というが、これを逆から書いて、emirip(エミリプ)という数がある。これは例えば 13 のように、それを逆から書いた 31 もまた素数になるような数である≫という箇所(p.2)。
知識が無くとも、この記述そのものに錯誤のあることは見て取れる。“prime”を逆に綴れば“emirp”であり、“エマープ”と読む。“emirip(エミリプ)”はミスプリで済まされる誤りではなさそうだ。
≪、、、は対的に互いに素である≫(p.15)はどうか。“対的に”は一般に認められた日本語なのか。
また、≪1/1+1/4+1/9+1/16+…という平方数の逆数の和を無限に加えると、n2/6 に限りなく近づいて収束する≫とある(p.17)が、この記述を導く段落に“n”なる記号は現れない。“n”が“π”のミスプリであることは調べれば直ぐに判ることだが、その“π”とて、自明の記号として済ませるわけにもいくまいと思われるが。
他にも、読解困難な箇所があったりすると、本書全体の信憑性、正確性が揺らぐことになる。
尤も、記述が数学的に正しいか否か、読み手の自己責任に於いて確認しつつ読み進める分には、これも好個の学習参考書であると言える。