宮沢賢治(1896年8月 27日~1933年 9月21日)没後80年に託けて「雨ニモマケズ」をミニコンサートで取り上げていた5-6年前の頃、彼の他の歌曲の資料も収集していた。その中に、「大菩薩峠の歌」という、彼の童話作家イメージにそぐわないものがあった。
歌詞は次の通り:
廿日月かざす刃は音無しの 虚空も二つときりさぐる その竜之助
風もなき修羅のさかひを行き惑ひ すすきすがるるいのじ原 その雲のいろ
日は沈み鳥はねぐらにかへれども ひとはかへらぬ修羅の旅 その竜之助
殺人剣を振るう冷血無情の机竜之介を髣髴させるが、弱者の味方たる賢治とどのように結び付けられるのか。
あるいは、そのように深刻に受け止めるような作品ではなく、彼の余楽、余技の一端なのか。
長調とも短調ともつかぬ♯3個の四分の4拍子、無色のメロディーは、単純ながら、歌詞に相応しい、なかなかの秀作のように思われる。