謎の啄木短歌 ≪はうきぼし玉座につかずかの虚空翔る自在を喜びて去る
石川彗星≫
について、取り敢えず遡れる典拠として久保田正文/編「新編啄木歌集」(岩波書店 1993.5)を実見した。
結果は想定外の驚きであった:
≪はうきぼし王座 ( わうざ )につかずかの虚空 ( こくう )翔 ( かけ )る自在 ( じざい )を喜 ( よろこ )びて去 ( さ )る≫ 片尾白眼
小樽日報 第14号 M40.11.6
旧版に当たる「啄木歌集」の編纂後の研究成果により新たに発見された啄木作品の一つとして新版に収録されたものということだ。作者は“片尾白眼”となっているが、啄木であると断定されたという。読者の投稿を促すための、言わば“おとり”ないし“さくら”と言う訳だ。
そして、「王座」は「玉座」ではなく、「王座 ( わうざ )」であった。己の語感を信じていたのだが、もはや当てにならないことを知った。疑問があれば、実直に原典に当たってみなければならない。
「一握の砂」に秘められた謎≪素数≫については以前かいたところだが、今回「新編啄木歌集」の解説を読み、啄木の遺著「悲しき玩具」にも素数の謎が込められていることを発見した。実際のところ、謎ではなく、偶然の結果であることは確かだと思うが、謎あるいは秘密めかして見るのも面白い。