知らない歌だが、タイトルの「残菊物語」に呆けた脳が反応した。つまり、過去に見たか、聞いたかしたタイトルだと思われた。
その後、偶然に己がノートにメモを見付けた。“残菊物語 佐伯/深井 楠繁夫 ビクター”とある。何のことは無い、つい最近その古い録音を聴いたばかりだったのだ。多数の曲を一度に聞いたので、明瞭に思い出せなかったようだ。
深井史朗は作曲家、東海林は歌手、同郷にして知人の間柄であり、デビューする前の東海林に深井が合唱団の仕事を紹介したというエピソードが伝えられている。
両者が活躍した時期は重なるが、その組み合わせでのレコードは見当たらない。所属会社が異なるなどの事情があったのかどうか、些か気になる。
二つの「残菊物語」があるとなると、その関係を知りたくなるのは当然だ。手っ取り早くネット検索したところ、「残菊物語」なる小説(村松梢風作)を基にした映画やTVドラマが複数あり、それらに肖った音楽作品もかなりの数あることが判った。
例えば、上記の外、“橋 掬太郎/大村 能章[作曲],三門 順子 キングレコード”“西條 八十/佐々 紅華,藤本 二三吉,夏川 佳子,甲斐 百合子コロムビア”などがある。
あるサイトには、“「残菊物語」(1939年)は、「浪花女」(1940年)「芸道一代男」(1941年)とともに、溝口健二の「芸道三部作」と呼ばれている”と解説されている。この溝口映画の音楽を担当したのが深井だった。
“残菊物語 佐伯/深井 楠繁夫 ビクター”は当然その映画の主題歌だったのだろうな。