某旧制高校OB会の会報に面白い老年学講座が載っていたので、抜粋、記録しておこう:
≪「運動は最高の健康長寿法」
ジョン・F・レイティは、『脳のすべてがわかる本』のなかで、「運動を抜きにしては、それこそ脳は存在しない」とし、好例としてホヤのケースをあげている。ホヤという小型の海洋生物は、オタマジャクシの形をして海中を浮遊する幼生期のあいだだけは、その動きをコントロールする脳や神経索が備わっている。ところが、成熟して岩に付着し、二度とその場を離れないようになった時点で、脳も神経索も次第に吸収されて無くなってしまう。人間の場合も「動くこと」が少なくなればなるほど、脳は衰え、その働きは弱って、心身の老化は急激に進み、やがて廃人のように死ぬほかはない。
「効果的な運動の内容―足八丁・手八丁・口八丁・脳八丁」
医学博士で文学博士の地三郎(1906~2013)は、『106歳を超えて、私がいま伝えたいこと』と題した最後の著書の中で、「脳を甘やかさず、酷使することこそ、もっとも大事な健康法の一つ」とした上で、「口と手と足を使って生きること」の重要性を強調、「人生は口八丁、手八丁、足八丁の‘二十四丁’で行け」と提案している。私は、「脳」の八丁を加え、合計「三十二丁」の運動指針をまとめてみた。
[足8丁]
① 毎日、30分のウォーキンングをする。
② 毎朝、足、手、首を動かす体操をする。
③ 階段のある所では、エレベータ-などは使わず、すべて歩く
④ 日常の用事は人に頼まず、自分で立って用を済ます。
⑤ 買い物に出ることは、大事な仕事の一つだ。
⑥ 仲間や家族と、旅行、山登り、ハイキングを大いに楽しもう。
⑦ 観劇、スポーツ観戦、展覧会、美術展の観賞など外に出る機会はたくさんある。
⑧ 月に1,2回、歩いて図書館通いをしよう。
(毎日一回以上外出している人は、平均的な人に比べ、歩けなくなったり、認知症になったりする危険が三分の一から四分の一に減少するといわれている。)
[手八丁]
① 毎朝、顔を洗い、歯を磨く。
② 自分の手で料理する。男性も、果物の皮むきから始めて、料理の手順を覚えよう。
③ 掃除、後片付け、フロの支度、庭の手入れなど、こまめに家事をこなす。
④ 編み物、刺繍、アートフラワーなどの手芸や、陶芸、絵画、書道、彫刻などの趣味を楽しむ。
⑤ 毎日、日記を書く。
⑥ 知人や友人とこまめに文通する。
⑦ ピアノやギター、三味線など楽器を習う。
⑧ テニス、卓球、玉突き、キャッチボールなどのスポーツをする。
[口八丁]
① 毎日、朝食をきちんととる。
② よく噛んで食べる(一口30回)。
③ 起床後、就寝前に深呼吸をする。
④ いろんな人とおしゃべりして、友達の輪を広げよう。
⑤ 常に笑いをわすれない(一日一笑、一怒一老、一笑一若)。
⑥ 好きな歌を歌う(カラオケでもアカペラでも)。
⑦ 新聞や本を朗読する(読経でも良い)。
⑧ ハモニカや吹奏楽器を習う。
[脳八丁]
① 読書をする。
② 一日一知(新聞を読み、切り抜きをする)。
③ 積極的にボランティア活動をする。
④ 自分の好きなことを探し、五つ以上の趣味を持つ(老後は長いから、一つや二つの趣味ではとても足りない)。
⑤ 仲間と囲碁、将棋、ブリッジ、麻雀、パズルなどをする。
⑥ 詩、短歌、俳句などをつくり、新聞、雑誌に投稿する。
⑦ 長時間テレビをみない(カウチポテトは最悪)。
⑧ 睡眠時間は、長すぎても短かすぎてもいけない。
(睡眠時間と死亡率とは関係があり、睡眠時間が4時間未満の人と10時間以上の人は死亡率が高く、死亡率が一番低かったのは、7時間睡眠の人だった。)≫(山本 思外里)
ホヤの定着後の脳退化は知らなかった。興味深いことだ。移動はしなくとも、体を伸縮させる程度の運動はしているだろうと思うが、神経系統は不要なのか。サンゴの場合はどうなのだろうか。
足八丁の⑦ 観劇、スポーツ観戦、展覧会、美術展の観賞など、、、に音楽会、コンサートが例示されていないのは意外だし、「脳八丁」が“効果的な運動内容”に該当するのか気になるが、運動指針の各項目は健康法として一般に推奨されているところと殆ど同じだ。
慣用句「口八丁、手八丁」や病名「手足口病」に引っ掛けた‘八x3=二十四丁’あるいは‘八x4=三十二丁’の形も気が利いている。
折しも、次のようなニュースが流れている:
≪子どもに多い夏風邪、手足口病の流行が今も続き、1週間当たりの患者数が、この時期としては過去10年で最多となっている≫