某所で「明日がある」という歌を二十数名で斉唱していた時のこと、二番から三番に移る際に、伴奏者が突然に転調し、キーを低くした。
折角いい気分で歌っているものを、低い音の方へ誘導されては気が抜けてしまう。転調を無視して、原調のまま歌い続けることにした。皆さんは素直に低めに誘導された。
実に奇妙な合唱になって聞こえた。気が緩むと、皆さんの方に感化されてしまいそうなので、些か緊張の連続であった。時々音程がふらついたことは否めないが、何とか最後まで原調を維持した。
伴奏者にも異端児の声は聞こえており、“音感のいい人ですねー”とのお言葉があった。褒められたのか、皮肉られたのか判然としないが、“音感”の問題だろうか。
それはともかく、一つのメロディーを複数の異なる調で合唱(合奏)するとは、どういうことなのだろうか。全くナンセンスなのか。それとも、無調音楽のように、ひとつの可能性を持つのだろうか。