ジェイムズ・P・ホーガン/著・池央耿/訳「星を継ぐもの」(創元推理文庫 1980.5 原題:Inheritthe Stars, 1977)を半分ほどまで読み進んだ。いわゆるSF小説だが、著者は科学的知識が豊であるらしく、記述内容の真否を判断するのは難しい。それだけに、迫真性を強く帯びている。
原著の出版がちょうど40年前で、アメリカのアポロ計画が終息する頃に当たり、その半世紀ほど後の、つまり現在より10年ほど後の時代の宇宙探検・開発物語である。著者の想像力は、航空機・ロケットについては逞しい。通信・情報処理技術に関してはあまり飛躍が無く、TV電話が登場するくらいである。
それにしても、訳書の初版が1980年で、当方の借り受けた本が2011年の87版というのは、驚愕のロングセラーにしてベストセラーではないか。何が評価されているのか。
話しは面白く、推理小説のようでもある。地球の月の地下に空洞を発見する場面がある。謎の人種ルナリアンが月面地下に建設した基地の廃墟という設定である。
ここで直ぐに思い出すのは、次のような最近のニュースである:
国際共同研究チームは、日本の月周回衛星「かぐや」に搭載された電波レーダ、月レーダサウンダーで取得したデータを解析し、月の火山地域の地下、数10メートルから数100メートルの深さに、複数の空洞の存在を確認しました。確認された地下空洞の一つは、「かぐや」が発見した縦孔を東端として、西に数10キロメートル伸びた巨大なものです。地下空洞の存在を確実にした今回の成果は、科学的にも将来の月探査においても重要なものです。溶岩チューブのような地下空洞内部は、月の起源と進化の様々な課題を解決出来る場所であり、また月における基地建設として最適の場所だからです。縦孔は、こうした地下空洞への入り口の可能性がありますが、縦孔の数は非常に少なく、科学的探査や基地を作ることのできる地下空洞は希少かもしれません。