つい最近読み終わった長編翻訳小説『DAX(ダックス)』(ハロルド・ロビンス/落合信彦、ザ・マサダ刊1995.10.30)。宣伝文句は大体次のよう:
≪南米の小国コルテグアイ。民衆は飢えに苛まれ、革命の気運が高まりつつあった。母と姉を山賊に惨殺されたダックス・ゼノスは、わずか6歳で革命軍に加わり、死と暴力の世界に生きることになる。希望と絶望が交錯する日々の中で、幼い少年が胸に刻みつけたものは―第二次大戦前後の激しく揺れた時代、父の遺志を継ぎ、故国コルテグアイの発展に尽力するダックス。その体から発散する野生のパワーは女たちを惹きつけ“世界最強のプレイボーイ外交官”の異名をとるほどに数多くの浮名を流す。利権を求めて群がる資本家。独裁者と化してゆく大統領。権力と富をめぐる闘争の中で、彼が得たものは―実在の人物をモデルに描き上げられた究極のエンターテインメント。ひとりの男の波乱の人生を通して描く大河小説の傑作≫
登場人物があまりに多くて、最後まで話の全貌を把握できなかったが、背骨部分は何とかイメージ出来た。その背骨には含まれない登場人物に、ダニア・ファーカスというソプラノのオペラ歌手がいる。訳者あとがきによれば、登場人物の殆どは、対応するモデルが実在するという。ダニア・ファーカスとは、マリア・カラスだとの種明かしだ。言われてみれば、完全に韻を踏んでいる。
各章冒頭の人物プロフィールを改めて読めば、≪ダニア・ファーカス:ギリシャ系アメリカ人のオペラ歌手。カルメンを得意とする世紀の歌姫。~に弱みを握られていて手が切れない≫などとされている。作中では、歌姫としての活躍の場面は無く、ドロドロとした人間関係の色づけ役となっている。
今日はカラスの没後40年の忌日だったのだ。DAXを読んだタイミングに、またまた神秘性を感じる。大部な上下2冊本は、図書館の廃棄本の箱に入っていたものだ。