『全国旧制高等学校寮歌名曲選 Part2』(春秋社 2017.4)の追補に、≪2)正門から出た旧制高等學校の歌 D)「君が代」から流行歌まで≫の2番目で「73. 緑もぞ濃き柏葉の」(一高 明治36年第13回紀念祭東寮歌)が、「不如帰」(明治42年 流行歌 作者不詳)に応用されたことが記されている。
寮歌「緑もぞ濃き」のメロディー冒頭の8小節を少し崩して繰り返すことで各番を歌う形になっている。歌詞は次のようである:
緑も深き白楊の 蔭を今宵の宿りにて 恋しき妻とただ二人 或いは泣きつ慰めつ
別れし日より一星霜 その時妻はわが両手 しかと握りて俯きつ 早く帰りて頂戴な
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「不如帰」は、世界大百科事典第2版の解説によれば、≪徳冨蘆花の長編小説。1898年から99年にかけて《国民新聞》に連載,改稿して1900年に刊行≫である。小説の発表から十年ほど経ってからの流行歌出現となるのは、どのような事情なのか。
ウィキペディアによれば、≪映画 1909年『ホトトギス』≫とあり、1909年は明治42年だから、映画化に便乗した替え歌だったのか。逆に、「緑もぞ濃き」が当時人々に親しまれていたということでもあるのか。
尤も、流行歌と言っても、旧制高校生の間での流行だったのかも知れない。