半年ほど前に、島崎藤村/大中寅二による名曲「椰子の実」(1936)より8年早く、加藤まさを/佐々木すぐるによる「椰子の実」(1928)が発表され、レコードも発売されていたらしいことを取り上げた(加藤まさを作詞~椰子の実~佐々木すぐる作曲 2017/3/20(月))。
今度は、「椰子の葉」である。『全国旧制高等学校寮歌名曲選』([Part1] 春秋社 2015.1)に、岩村光介作詞/伊東謙作曲、臺北帝國大學豫科の創業歌(昭和16年)として掲載されている。タイトルは、歌詞1番の出だしから「椰子の葉茂る」となっている:
椰子の葉茂る学舎に 創始の春は淺けれど
健児幾百今起ちて 歴史の砦建てんかな
あゝ若き血は湧き躍る
見よ悠久の大空に 聳ゆる不壊の新高を
我等朝に仰ぎみて 高き理想に生きんかな
あゝ峻嶺に日は昇る
聞け蒼茫の海原に 渦巻く潮のとヾろきを
吾等夕にきゝいりて 深き思想を汲まんかな
あゝ大洋はわれを呼ぶ
七星が嶺の霊をうけ 永久に薫らんこの蘭花
吾等たゆまず培ひて 御代の光と咲かせてん
あゝ新しき朝は来ぬ
ウェブ上には音源、数字譜、文字譜なども結構アップされている。上掲『名曲選』のメロディー譜から2,3か所外れているが、この種の歌にはよくあることだ。
滅びゆく≪寮歌≫のイメージがあるが、世の中にはちゃんと歌い継ぎ、後世に伝えて行こうと努める人達がいると知れる。心強いことだが、『名曲選』の序言によれば、寮歌等は総数約三千に上るという。そのうち、一般に入手可能な形で永く伝えられるのは一割程度ではないかと危惧される。