ショパンのピアノ作品に、黒鍵だけを使うのがあると何十年も前から記憶していた。その曲をレコードやラジオで聞いたことがあったかどうかは定かではない。
ついひと月ほど前、名人による実演を偶然に聴く機会があった。勿論、聴いただけでそれが≪黒鍵だけを使用した≫曲であると判るはずもなく、名人の説明でそれと知ったに過ぎない。
その後、何の拍子か、会話中に「ショパンの黒鍵」が口の端に上った。誰かが極く自然に「~~~調」と、のたまった。その「~~~調」を計算すると、♯だか♭だかが6個の調であることになる。
頭がもやもやしている中にも、≪♯だか♭だかが6個≫と≪黒鍵だけ≫とが次第に結びついて来た。≪黒鍵だけ≫を≪黒鍵すべて≫と置き換えると、≪白鍵すべてに♯だか♭だか≫を付けることに辿り着いた。必要条件ではないが、十分条件だ。
最終的に楽譜を確認したくなり、ネット検索したところ、件の曲は、正式には≪練習曲作品10 第5番変ト長調≫、つまり♭6個であると判った。
しかも、≪黒鍵だけ≫は誤りで、≪右手による主旋律の全てが(第66小節の2拍目のヘ音を除いて)黒鍵によって演奏される≫ことが判った。