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Channel: 愛唱会きらくジャーナル
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万葉集から古代を読みとく ~ 誰そ彼(たそかれ)~ 映画『君の名は。』

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例の如く、新聞の書評欄に刺激されて、上野誠/著「万葉集から古代を読みとく」(筑摩書房 2017.5)を図書館から借りて、読み始めた。書き出しは≪新海誠監督の映画『君の名は。』(二〇一六年)を見た≫である。
 
そして、“映画『君の名は。』のタイトルのもとになっているのは、
 
≪誰そ彼と 我をな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つ我を (巻十の二二四〇)≫
 
という歌の「誰そ彼(たそかれ)」という言葉である”と規定し、次のように訳している:
 
≪誰なのかあの人はなどと、私に聞かないでおくれ。秋深まる九月の露に濡れながら、あなたを待っているこの私のことを―――≫
 
この訳は正しいのか。
 
人から“当代を代表する万葉学者のひとり”と言われ、“万葉学徒の端くれ”と自称する著者の言説に対してド素人たる当方が疑いを差し挟むとは、身の程知らずの愚か者と嘲弄されるかも知れないが、やはり、この訳には納得できない。
 
「誰そ彼」とは、読み人たる「私」を遠くから見た「君」が傍の第三者に対して投げ掛ける問いではないのか。訳のように「君」が「私」に対して直接に問いかける場合には、「誰そ彼」の「彼」が的外れの言葉になるのではないか。「誰そ汝(たそなれ)」とでも言わなければならないのではないか。
 
ところで、映画のタイトルが『君の名は。』のように句点(。)付きというのも珍しいように思うが、どうだろうか。敢えて句点を付けた意図は奈辺にありや、などと呟くと、映画を観てから批評しろと叱られるかな。
 
それはともかく、本書は面白そうだ。

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