雑用も無い無聊を慰めようと風雨の中を地下鉄で2駅離れた某施設に出掛けた。誰でも参加できる歌の集いであるが、年寄りばかりだ。講師は中年の現役クラシック歌手(ソプラノ)で、ピアノもこのお役目に必要な程度には弾きこなす。
曲目は、施設で編集した歌集から、参加者の希望に応じて適宜選ぶ。童謡、唱歌と古い歌謡曲を十曲ほど歌った中に、「ほたる」があった。歌詞は縦書きであるが、次のようであった:
ほ ほ ほたるこい わらべうた
あっちのみずは にがいぞ
こっちのみずは あまいぞ
ほ ほ ほたるこい
ほ ほ ほたるこい 林柳波 作詞
ちいさなちょうちんさげてこい 下總皖一作曲
星の数ほどとんでこい
ほ ほ ほたるこい
歌詞にしか目が行かず、当然の如く、「一番」及び「二番」として歌った。「二番」は講師も含めて全員初見であった。そこで、≪林柳波 作詞、下總皖一作曲≫の記載の存在が急に気になり始めた。
この体裁に鑑みれば、「二番」ではなく、別の歌であると考えるのが自然だと思われた。歌詞の文体を見れば、「一番」、「二番」を連記したものと思われるが、林柳波がわらべ歌に倣って創作した歌詞に下總皖一が曲を付けた別の歌であると自信を持って結論した。
帰宅後、この件を確認しようとネット検索した結果、全くの考え過ぎによる誤解であると判明した。
上記歌詞は、やはり「一番」及び「二番」だったのだ。
≪林柳波 作詞、下總皖一作曲≫の記載は編集ミスと考えられる。正確さ、厳密さなど念頭に無い杜撰な作業の産物だったのだ。その点は、別件の複数事例で判っていた筈なのに、ついつい≪配付資料≫の無謬性という先入観に囚われていた。
しかし、検索の付随的成果として、童謡「ほたる」には全国に様々な歌詞の有ることが解った。