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うた 歌 ~ 祭祀 ~ うた 唄

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数日前の新聞で、漢字学者が「歌」について書いたコラムが簡にして要を得ているので、記録しておこう:
 

イメージ 1 歌の対象 神から人間に阿辻哲次 2017/5/28日経朝刊

~ 数十万年前の原人だって、私たちと同じように、嬉(うれ)しい時には笑い、悲しい時には泣いたにちがいないが、それでも娯楽と呼べるものは格段に少なかったし、嬉しい時には口から音声を出しただろうが、それが歌かどうかはわからない。
~ 洋の東西を問わず、歌は祭祀(さいし)の場で歌われるものとして発生し、原則的に楽器による伴奏がついていた。それは神に捧(ささ)げられる楽曲であり、決して娯楽として口ずさむものではなかった。日本語の「うた」の語源について、一説では言霊によって相手の魂を激しく揺さぶる、という意味の「打つ」に由来するという。
 「歌」は古くは「謌」と書かれた。《言》は口から言葉を発することを意味し、右側の《哥》は「カ」という発音を表すために加えられた要素である。
 私たちにおなじみの「歌」では《言》が《欠》になっているが、《欠》は人が口を大きくあけているさまをかたどった文字で、もともとは口から空気を出したり、言葉を発したり、あるいは歌ったりする行為を表した。~
 だから「歌」の本来の意味は、人が口から大きな声を出すことであり、そうして歌われた言葉そのものも、また「歌」という漢字で表されるようになった。
 歌とは敬虔(けいけん)な心持ちで神に捧(ささ)げるものだった。~ 歌の対象がこうして神から人間になっても、歌が心の感動から発せられるものであることだけは、どうかかわらないでいてほしいものだ。(漢字学者)
 
「歌」の字の成り立ちについてざっと理解すると、今度は「唄」が気になるのは自然だ。そこで、便利なウェブ辞書を参照する:
 

うた ブリタニカ国際大百科事典小項目事典の解説

 
音声による芸術的表現の一つ。歌,哥,謌,謳,謡,諷,唱,詠,唄などさまざまな漢字をあてる。その語源にも諸説あり,手拍子を「打つ」ことに由来するとする説や,情感を「うったふ」または「うれたふ」から出たとする説などがあり,その動詞形の「うたふ」との先後関係も明らかではない。
 
古代においては,実際に声を出して歌われるものに「歌」もしくはその異体字をあてたが,中国の詩賦をまねて文芸本位の読む「和歌」が成立して,その区別に混乱が生じた。中国では,楽器に合せるものを「歌」,無伴奏のものを「謡」または「謳」とし,また,斉唱の歌を「謳」などと区別したこともあったが,日本ではすべて同義として「うた」の語にあてた。
 
中世には,実際に歌われるものは,特に「謳歌」と字を重ねて区別したこともある。中国で用いられていた「歌謡」の語は,明治以降に国文学者などによって「謳歌」に代えて使われるようになった。
 
音声表現のうちで音楽性の強いものを「うた」として,音楽性の弱い「コトバ」との対概念として用いることもあるが,芸術的な音声表現のうちで特に音節の引延ばしが多く,そこに旋律性が加えられたものを「うた」とし,あまり音節は引き延ばさず,時価の問題は別として,言語の韻律を拍に対応させようとする朗誦性の強い「語り」に対する概念として用いることもある。
 
中世の猿楽能において,その声楽に「謡」「諷」などの字をあてて「うたひ」と称したのは特殊な用法であるが,音楽用語としては,器楽に対する声楽を特に「うたもの」または「うたいもの」と称して,「歌物」「謡物」などとあてることもある。
 
近世の江戸においては,「唄」の字をあてて,文芸上の「歌」や語り物の浄瑠璃などの声曲に対して,歌曲性を強調する場合に用いる傾向も生じたが,関西においては「歌」の字をあてたままでそうした性格を強調した。
 
「唄」の字は≪歌曲性を強調する江戸風≫の用法であるとのことだから、≪俗っぽい歌≫という当方永年の思い込みは誤解だったようだ。
 
これとは別に、次のような解説もある:
 
 (デジタル大辞泉) 
声明(しょうみょう)の一種。漢語または梵語(ぼんご)で偈頌(げじゅ)を唱えるもの。短い詞章を一音一音長く引いて、揺りなどの節を多くつける。如来唄・云何唄(うんがばい)など。
「唄器(ばいき)」の略。 
 
こちらの用法が古いとすると、≪歌曲性を強調する江戸風≫との整合性はどう付けるのだろうか。

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