古田武彦『奪われた国歌「君が代」』を上辺をなぞるように粗読し終えた。引っ掛かることが2件残った。ひとつは、古田氏がいわゆる「金印」の真贋について触れていないことだ。意外なことに、彼は、それが後世の捏造品であるとは認識していない様子である。
ふたつ目は、いわゆる「郡評論争」である。お勉強サイトから引用すると:
≪郡評論争(ぐんぴょうろんそう)
地方組織の郡・評を巡って、戦後の日本古代史の学界であった論争。
7世紀後半の史料には、『日本書紀』では「郡」、金石文では「評」が使用されていた。
そのため『日本書紀』の改新の詔にみえる郡は潤色であったとの説が出され、その後も郡と評について諸説が相次いで出された。
その後、藤原宮木簡に699年とされる年と評を記すものが出土し、大宝律令の施行によって評から郡に改められたと考えられるようになった。≫
ということで、『日本書紀』潤色説が定説になっているようだが、ごく最近の新知見で状勢が流動的になったのではなかったか。古田氏の本書執筆時点では潤色説で記述することは当然であるので、揚げ足を取るつもりは全く無いが、新知見を加味すると氏の論調は変わるのだろうか。