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Channel: 愛唱会きらくジャーナル
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眠れ、悪しき子よ ~ 素数様式 ~ 散文詩

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丸山健二・著「眠れ、悪しき子よ」(上・下、文春2011)を読んだ。この本を図書館に借用申し込したのは、≪全六百ページの各ページがいずれも素数である2・3・5・7行の四段書きで統一されており、作中の住宅戸数や殺される人数も素数である≫と何かに書いてあったからだ。

 
何にそう書いてあったのか覚えていないうえ、素数で統一することに如何なる意味が込められているのか皆目見当もつかない。それでも、≪素数≫の一語に魅せられて読む気になった。
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読んでみると、素数様式など問題にならないくらいに奇妙な小説だった。内容もさることながら、文体に特徴がある。過不足なく、また、論理的に、順序良く情報を提供するのが普通の小説だと思うが、本書は、ほとんど散文詩だ。と思って読み進んだら、次のようなくだりがあった:
 
≪春の温かい雨によって、砂州町は的に一に帰せられている。だが、町民たちはますます散文的な人間へと傾向している。不退転の眼差しなど見たくもない≫(下巻p.91 太字は当管理人)
 
定年前の55歳で退職して、故郷の町の郊外、丘の中腹の町営住宅に移住した主人公の哲学的雑念、妄想、夢想の部分と現実の日常生活が脈絡なく交互に記述され、それを縫って様々な事件が挟み込まれる。事件はすべて主人公の身の上に関係することが最終的に明らかにされる。
 
あまり筋書きのはっきりしない小説で、特に主人公の想念を記述する部分には飽き飽きして、途中から飛ばし読みした。最後まで一応目を通したのは、当方の結末予想の当たり外れに興味があったのと、素数様式に何か隠された意味があるのかと気になっていたからだ。
 
予想は的中した。主人公は運命の赤い糸に結ばれて自滅し、話は終わった。
 
素数の意味は不明のままである。素数は割り切れない、人の一生も割り切れない、と連想させる狙いだろうか。それとも、2・3・5・7の総和は17(これも素数)で、俳句形式の5・7・5の総和も17、などということに関係が有るのか。あるいは単なるお遊びか。
 

ちなみに、2357は素数である。今日の日付けも、2017.5.13と書けば素数となる。

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