前回取り上げた≪版画コピー事件≫の少し詳しい記事があった:
≪志功の版画、実はカラーコピー 観覧者指摘、すり替え発覚 神奈川県民ホール 朝日新聞 2017年4月18日05時00分
神奈川県が40年以上前に棟方志功に特別に制作を依頼し、300万円で購入した版画が、いつの間にかカラーコピーの複製に入れ替わっていた。2014年に開かれた展覧会で、観覧者に指摘されて発覚。約3年間、本物を探したが見つからず、県が17日に発表した。盗難に遭ったとみて県警に被害届を出す方針。
「宇宙讃(うちゅうさん)(神奈雅和〈かながわ〉の柵)」という作品で、横約65センチ、縦約50センチ。県民ホール(横浜市中区)の開館に合わせ、緞帳(どんちょう)の原画として晩年の棟方に制作を依頼した。県が1974年10月に受け取り、緞帳制作会社に一時期預けた後、額に入れて館長室に展示していた。
本物は和紙に刷られたものだったが、コピーされたのは普通紙。上下逆さまに額に貼り付けてしまったとみられ、台紙の裏に取り付けられていた、額をつり下げるためのひもの位置を変えた形跡があった。
指摘を受けた後、3年も発表しなかった理由について、県民ホールの指定管理者である神奈川芸術文化財団の薄井英男専務理事は「ホール内のどこかに本物があると思って探していた」と話している。≫
この記事で新たに判った重要な点は、①県が版画を受け取ったのは1974年10月であること、②緞帳制作会社に一時期預けたこと、③その後は額に入れて館長室に展示していたこと、だろう。しかし、これだけでは、版画をどの時期、誰が管理していたか、具体的な時系列情報は得られない。
コピーであると指摘された2014年までの約40年間のどの時点ですり替えられたのかのヒントも無い。本物であることが最後に確認されたのは何時のことかぐらいは明らかにして欲しい。時間を遡って調べるとしても、40年では解明不可能だろう。
カラーコピーの品質、技術レベルや、コピー用紙の特徴などから相当のことが判るだろうと想像されるが、これらの科学調査は行われたのか。その結果はどうなのか。
「ホール内のどこかに本物があると思って(3年間)探していた」という弁明をなるほどと受け止める人がいるだろうか。神奈川県民は愚弄されていると思うのだが、誰も怒らないのかな。
たかが三百万円の版画1枚紛失したとて目くじら立てることあるまい、と大人の対応をする人が多いのかな。