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超予測力 ~ 評価可能予測 ~ 想定外

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最近読んだ本:テトロック、ガードナー『超予測力』(土方訳、早川書房 2016.10
副題が≪不確実な時代の先を読む10カ条≫で、新聞書評欄のお奨めが無くとも読みたくなる本だ。販売サイトによる内容紹介:
 
≪「専門家の予測精度はチンパンジーのダーツ投げ並みのお粗末さ」という調査結果で注目を浴びた本書の著者テトロックは、一方で実際に卓越した成績をおさめる「超予測者」が存在することも知り、その力の源泉を探るプロジェクトを開始した。その結果見えてきた鉄壁の10カ条とは…≫
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「超予測者」などと聞くと、超能力者的印象を受けるが、実際には、様々な分野の予測課題について、各分野の専門家・評論家たちよりも概して良い成績を収める人達を指している。つまり、予測の精度がどれほど高いか、低いかの程度問題を話題にしているものだ。
 
高 給で雇われたり、マスメディアで名前の売れている専門家たちの≪予測≫が外れても想定外の状況の所為にしたり、そもそも予測の名に値しない曖昧模糊たるものであったりするのに対し、著者らは事後評価の可能な予測課題を多数設定し、多数の予測実験参加者の成績を長期にわたり記録、分析した。
 
多数の予測実験参加者のうち一部の人たちが常に良い成績を得ていることが判り、彼等を「超予測者」と名づけて、その特性を明かした要点が≪不確実な時代の先を読む10カ条≫というわけだ。
 
その中身は、考え方の傾向(確実なことは何も無いとする慎重さ、現実は複雑であるとする謙虚さ、何が起きるか起きないかは決まっていないとする非決定論)、能力・思考スタイル(積極的柔軟性、知的博識、思慮深さ、数字志向)、予測方法の傾向(現実的、分析的、広視野、フィードバック、心理バイアス認識)、努力(能力は伸ばせるとの信念、努力し続ける強い意思)などとされる。
 
当方流に言い換えると、≪客観性、合理性、柔軟性、向上心≫とでもなるだろうか。要するに、目から鱗が落ちる、明快直截な秘訣など無いのだ。従来の予測がいい加減な言葉遊び程度でしかなかったことを痛烈に批判してもいる。
 
このことは、予測だけでなく、政治屋の公約や権力当局の政策目標についてもあてはまるだろう。ゆるやかな改善が何年も続いていると言いながら、目標時期が来ても未だ政策効果を見極める必要があるなどとはぐらかしたりして、そのうち任期切れでトンずらしそうな人を思い出した。
 
本書に引用(p.312)されているリントン・ウェルズなる人物の意見書の文言が気に入った:
 
≪予測不能な未来への計画を立てるなら、想定外に備えよ
 
この意見書は、2001年4月11日、アメリカ国防長官が正副大統領に送付したものだという。例の9・11事件の5か月前だ。日本の総理大臣の耳に入っていれば、3.11の原発事故も防げたかな。

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