かなり前に、それより更に大昔の不思議な経験として、アメリカのラジオで「赤とんぼ」(三木露風/山田耕筰)のメロディーが間歇的に現れる器楽曲を聞いたことがあり、当欄にも記したような気がするのだが、検索してもヒットしないから勘違いかも知れない。
その不思議な経験は何年間も頭の片隅に引っ掛かっていて、知人たちに話したものだ。誰も真に受けなかった。他人にとってはつまらないヨタ話なのだろう。しかし、当方にとっては、何回も反芻した甲斐があって、齢を取っても消えることの無い永久記憶遺産となっている。
この数十年に亘る謎が、つい先日、あっけなく解けた。多分。
「赤とんぼ」が今月末の訪問コンサートの演目に入っているので、習慣的にウィキペディアを参照したところ、次のように述べられていた:
≪~なお、この曲の前半は、シューマンの『序奏と協奏的アレグロニ短調 op.134』(Concert - Allegrowith Introduction for Pianoforte and Orchestra Op. 134)の中で18回繰り返されるフレーズに酷似していることが指摘されている[1]。
1^吉行淳之介『赤とんぼ騒動』「文藝春秋」第59巻第9号(1981年8月1日発行)所収、『赤とんぼ騒動わが文学生活 1980〜1981』潮出版社1981年~≫早速、シューマンの『序奏と協奏的アレグロニ短調 op.134』を検索するとインタネット上に幾つも音源が公開されていたので、“18回繰り返されるフレーズ”かどうかはともかく、酷似するメロディーを確認できた。
シューマンの曲ならば、アメリカのラジオから流れて来ても不思議はない。
酷似指摘はいつごろから人口に膾炙しているのだろう。耕筰がこれを作曲したのは1927年だそうだ。