J. S. バッハ :前奏曲変ホ長調 BWV552-1
:哀悼行事「神の時こそいと良き時」BWV106からソナティーナ
:フーガ変ホ長調 BWV552-2
≪ J.S.バッハが晩年に出版した『クラヴィーア練習曲集第3部』。教理問答を題材にしたコラール作品を含み、ドイツ・オルガン・ミサとも呼ばれるこの曲集には、キリスト教における三位一体(父なる神・子なるキリスト・聖霊)を象徴する‘3’という数字が随所に散りばめられています。その曲集の最初と最後を飾る「前奏曲とフーガ」 変ホ長調は、まさに‘3’の祭典。調号には♭が‘3’つ、前奏曲は‘3’つの主題を用いて書かれ、フーガも‘3’つの主題による荘厳な‘3’重のフーガが展開されます。本日はこの「前奏曲とフーガ」の間に、故人への祈りと三位一体の神への讃美が歌われる「カンタータ第106番」の美しいシンフォニアを挟み、サントリーホール開館30周年のお祝いの気持ちと共に、‘3’が十分に用いられたこの喜ばしい作品を演奏いたします。
続いては、来週の七夕に想いを寄せて、フランス現代の作曲家・オルガニスト、オーベルタンによる「星」を題材にした作品を。オルガンの「倍音管」の重なりによって得られる特徴的なうなりと、ポリリズミックに書かれたスタッカートの音形が、儚げに煌めく夜空の星を連想させます。
1900年よりノートルダム大聖堂のオルガニストを務めたヴィエルヌは、世界中に演奏旅行を行い、一躍その名を世界に轟かせました。『24の幻想小曲集』第4巻の最後に収められている「ヒンクリーの鐘」は、演奏旅行でイギリスの街ヒンクリーを訪れた際、夜の街に響き渡る教会の鐘の音(カリヨン)に発想を得て書かれた作品です。音階をモチーフにした鐘が鳴る様な音形が響く中、鐘の主題がペダルで厳かに現れます。次第に、まるで流れ星が降るかのように鐘が打ち鳴らされていき、圧巻の終幕を迎えます。(梅干野安未)≫