「全國大學專門學校高等學校校歌集」という古い本がある。初刷が昭和2年11月5日で、同月20日に第4刷発行と奥付にある。部数までは判らないが、かなり売れたようで、公的な図書館にも蔵されている。
類書が少なくない中で、本書は収録内容が充実しているように思われる。東京帝国大学から東亜同文書院まで115校の校歌、学歌、応援歌、寮歌などを1校につき複数載せているので、総曲数は数百に上る(筈である)。
通覧するだけでも面白い。曲譜は数字譜が多数派である。旧制度の下ながら、英語の歌詞が散見される。校歌ではないが、冒頭に「君が代」が来て、カタカナとローマ字が併記されている。
以前、北大予科の「恵迪寮 寮歌集」に、“英語2曲、ドイツ語1曲”収録されていることを報告した(木原均~恵迪寮寮歌~スポーツマン 2013/9/10(火) )。欧米先進国に追いつくことを無意識のうちにも目標としていた時代には、英語、ドイツ語などの校歌類にも余り抵抗は無かったのだろうか。
英語曲で、神戸女学院の“ALUMNAE SONG ”(同窓会の歌)と称するものがある:
“Tune: I will sing you a song of that beautiful land,
Sambika, 342
Key E♭
{ 五 線 譜 }
1 There’s a song in our hearts of the times that are past,
As we gather in gladness to-day;
Looking back o’er the years from the first to the last,
~~~~ ”
という調子で2ページに亘る。単純に見れば、ここの{ 五 線 譜 }が
“a song of that beautiful land”すなわち“Sambika, 342”であり、調はE♭(変ホ長調)、歌詞は“There’s a song in our hearts of~”(4番まである)ということだ。
ただ、“a song of that beautiful land”が気になる。古い男声合唱曲「希望(のぞみ)の島」の原曲が“That Beautiful Land”であることは、以前紹介した(高校男子用音楽教科書~名曲・珍曲~愛唱歌奇遇 2010/7/30(金))。
この原曲は、アメリカで作られた讃美歌であった。しかし、神戸女学院の“There’s a song in our hearts of~”の歌は、詞・曲とも全く別物である。
ここで納得し切れないのは、この歌詞内容が、タイトルであるはずの“that
beautiful land”とあまりにも無縁のように見受けられるからである。もう少し周辺を洗ってみよう。