合唱を趣味にしていると、段々に欲が出て、人前で歌いたい、聴かせたいと思うようになる。コンサートを開いたり、合唱祭に参加したりという形がオーソドックスなところか。これらは一口に発表会と呼んでいいだろう。性質上、自分たちの費用負担で他人様に演奏を聴いて頂くものだ。
少し自信が付いてきたら、福祉施設や病院を訪問しての演奏会、いわゆるボランティア活動を始める。実績を積めば、各種イベントのアトラクションとして出演する機会も出来る。商業的な価値を認められて、何がしかの報酬(謝礼)を頂くこともあるだろう。
アマチュアであれば、報酬(謝礼)を目的として演奏を売り込む事は無いから、活動の原点は発表会にあると言っていいだろう。要するに自分たちが楽しむことが大前提にあり、その上、他人様にも楽しんで頂ければ幸いであるという立場だ。
しかし、世の中、甘くはなく、発表会に足を運ぶお客さんはそう多くないのが普通だ。勢い、内輪、仲間内の行事の域を出ないことが多い。その状況を打破出来ないと、意欲喪失、撤退となる恐れは多分にある。
そのような悲観的シナリオに陥らないよう、無い知恵を絞りつつ苦闘して居るところ、某書評紙に次のような気になる本を見付けた:
≪発表会文化論 アマチュアの表現活動を問う 宮入恭平・編著 青弓社 2015≫
本書は発表会を「日ごろの練習成果を披露するために、おもにアマチュアの出演者自らが出資して出演する、興業として成立しない公演」と定義しているという。われわれもそのような意識を持っているから、ある種の引け目を心に蔵しながら出演しているのだ。
評者の言葉もニクい:発表会という言葉には、プロのレベルに達しない表現を身内の人々に見ていただく、というニュアンスが色濃い。
本書を読まずに話題にするのも気が引けるが、我々にとっては救いのある内容であるようだ。
曰く「アマチュアの表現活動に対して公共セクターや市民社会はどのように関わるべきなのか」
「表現者の自己充足を自治的なコミュニティの生成につなげることが求められる」