日銀が日本経済を自在にコントロールしようとするのはでしゃばり過ぎの越権行為だと当管理人は考えている。物価上昇を目標に掲げるなど正気の沙汰ではないとも考える。このことは当欄でも述べたところだ(当局の経済介入~マイナス金利~公的株式投資 2016/2/11(木) など)。
しかし、メディアの論調も、野党の主張も、政府・日銀のインフレ目標未達成を槍玉に上げているだけのように見える。裏を返せば「物価が上がるよう有効な施策を講じなければ駄目じゃないか」と言っている訳だ。
そんな世間の風潮にイライラしていた当方の鬱憤を晴らしてくれる勇気ある論客が現れた。かなり長い記事を独断で切り縮めて記録して置こう:
朝日新聞デジタル 2016年4月8日05時00分
(インタビュー)貨幣が滅ぶとき 早稲田大学大学院教授・岩村充さん
“~物価が上がれば好況、下がれば不況というのは、短い歴史経験にもとづく短絡的な理解です~
~日銀が人の心の中まで操縦できるわけがないし、やるべきでもありません。中央銀行が自在に人々の心を操れると思うのは不遜です。~
~日銀があおるインフレ期待そのものに消費抑制効果があることも忘れてはいけない。1970年代の石油危機で分かったのは、物価の値上がりが予想されれば、所得が実質的に下がるのを警戒する人々が買い控えに動くことです。2%の消費税引き上げをためらっている政府が、2%のインフレ目標で景気拡大をめざすのは何ともチグハグです~
~日本では景気が悪かったからそれを『間違った金融政策』のせいにしてこられたのですが、いくら日銀総裁のクビをすげ替えても事態が良くならないということになったら、金融政策なんかいらないという声(註)が広がってくるのは時間の問題です~
~マネーの供給さえ増やせば人々がインフレを予想して消費に動くはずだと、3年間、量的緩和を続けてきました。これに対しマイナス金利は、インフレ期待が簡単には起きないことを前提に~していて~さっぱり分かりません~
~自由を標榜(ひょうぼう)し続けた経済学者として知られるハイエクは世界が高インフレに悩んでいた時代に、通貨を国家のコントロール下に置くな、と主張しました。民間銀行がそれぞれ貨幣を発行し、通貨価値を競い合えば通貨への信認を回復できると考えたのです。彼の主張は結局、民間銀行の競争ではなく、各国中央銀行の間の競争として実現しました。それが変動相場制です。そして世界のインフレは見事に終息したわけです~
(中央銀行の)役割は~人々の自然な期待にあわせて基盤を作る金融政策です。エリートが世界を指導するモデルではなく、エリートが世界に奉仕するモデルと言ってもいい。景気浮揚にばかり気を取られている今の金融政策では、未来はありません~”
こんなに歯に衣着せず物言う学者がいたとは、日本にも未だ望はあるかも知れない。
(註 権力的機関としての日銀は不要で、政府の出納機能を担うだけにすればよく、銀行券の発行は民間銀行(の組合)に任せてよいと当管理人は思っている。その趣旨のことを当欄でも述べたように記憶するのだが、勘違いかも知れない。)