明治から大正にかけての音楽月刊誌≪音楽界≫に、1913年頃、楽譜「愛の快楽」が掲載された。儒教道徳強固な時代に随分大胆な表題を付けたものだと、よくよく眺めてみると、現今、「愛の喜び」と題されるマルティーニの曲であった。
小生も合唱趣味にハマった初期(十年ちょっと前)に教わってとても気に入った曲だ(ランチタイムコンサート~騒音と雑踏の中で 2007/7/10(火))。百年以上も前に既に邦訳、紹介されていたとは知らなかった。
近藤朔風譯歌、ラザアル原歌:
“(一)歓喜(うれしさ)、夢と消えて、
悲嘆(なげき)まとふ、愛の快楽(けらく)。
永劫にかへぬ、 誓(ちかひ)かへて、
あだしひとに、君(なれ)は笑みぬ。
またゝく、 快楽(けらく)消えて、
あはれ永く、 われは嘆(なげ)く
(二)歓喜(うれしさ)、夢と消えて、
悲嘆(なげき)まとふ、愛の快楽(けらく)。
君(なれ)はいへる、「小野(おの)の流れ、
絶へぬかぎり、 誓(ちかひ)変へじ」。
またゝく、 快楽(けらく)消えて、
あはれ永く、 われは嘆(なげ)く
(三)歓喜(うれしさ)、夢と消えて、
悲嘆(なげき)まとふ、愛の快楽(けらく)。
小野(おの)の流れ、 なほも流る、
空(むな)し空し、 ひとの誓(ちかひ)。
またゝく、 快楽(けらく)消えて、
あはれ永く、 われは嘆(なげ)く”
各節6行のうち、前後各2行は共通で、アンコの中2行だけが変化する。名人、近藤朔風の作にしては稍物足りない印象だが、原歌に忠実なのかも知れない。ウィキペディアによれば、≪フランス語歌曲《愛の喜び Plaisird'Amour》が代表作。作詞はジャン・ピエール・クラリス。これは時にイタリア語の歌詞でも歌われる≫そうだ。実際、当管理人は≪Piacerd'amor≫で教わった。
≪音楽界≫誌に記載された“ラザアル原歌”の典拠は何だろう。ネット検索では、(イタリア語歌詞)作詞者不明としか出ない。
ところで、マルティーニさん、ことジャン・ポール・エジード・マルティニさんは、Jean
Paul Egide Martini, 1741年8月31日 - 1816年2月14日 だそうで、今年は没後二百年の節目なのだ。命日がヴァレンタイン・デイSt Valentine's Dayというのも奇縁?