空き時間に図書館で科学雑誌≪ニュートン 別冊 無と有の物理学≫を拾い読みした。猫に鰹節の如き項目がずらりと並んでいたが、真空に関する記述から読み始めたところ、次々と関連項目に飛ぶこととなり、些か散漫な印象に終わった。
とは言え、“真空”の概念を今までよりも明瞭に把握できたような気になったのは収穫である。ある有限の空間から分子、原子、素粒子など物質を完全に取り除いたものが真空と考えられるが、そこでは、(ある種の)素粒子が常に発生、消滅を繰り返しているのだという。つまり、何も無いという、単純な意味での真空はあり得ないらしい。
ここで言う素粒子は、超弦理論の“ヒモ状粒子”で、長さが10-32cm程度、太さゼロというシロモノだ。ちなみに、長さの理論的最小単位は10-33cmで、プランク長と呼ばれる。この紐は毎秒1042回というとてつもない超高速振動をしているらしい。その端部の動く速さは光速だという。
難しい理論をパスして、結論だけを取り上げると、真空における素粒子の発生・消滅の理論は、実験的に証明されているのだそうだ。勘違い・記憶違いでなければ、それは、カシミール効果の実証らしい。オランダのハンドリック・カシミール(1909-2000)が、平行に置かれた2枚の無帯電状態の金属板の間に吸引力が働くことを1948年に予想し、1997年に実証された。
金属板は1/1000mm程度にまで近づけなければ、この効果は検出できないのだそうだ。
そこで思い出すのは、近距離における重力の実測が大変難しいという話だ(重力とは何か~弱すぎ
カシミール効果については1/1000mm、重力については1/10mmという桁の違いは腑に落ちない。