古いレコード音源を幾つか聴いて、最後に「若い母の歌」(作詞時雨音羽/作曲細川潤一)の途中まで来た時、“ひのまる”が聞こえた。この歌は、いわゆる戦時歌謡で、短調の典型的な軍歌調であった。
ごく自然に日の丸の旗が目に浮かび、無謀な戦争に国民を駆り立てる小道具に使われた履歴から、現代日本の国旗には相応しくないと考えた。日の丸に代る国旗としてはどんなデザインが良いか、真円ではなく楕円でどうかというアイディアが浮かんだ。
日の丸の簡潔さは無視できない長所であるし、変更するにしても、ある程度の連続性もあった方が良さそうだ、と安易な連想だった。仮に楕円を採用するなら、離心率を定める必要があるだろう、などというところで妄想は終わり、現実世界に戻り、懐メロ鑑賞は終わった。
その直後、PCのEメールチェックで目に飛び込んできたのが、
政治は全ての国民が参加するコーラスで、首相の役割は指揮者のようにハーモニーの維持に努めること--。こう位置づけた、この国のリーダーがいた。大平正芳さん。
▽特集ワイド:会いたい・戦後70年の夏に/5 「楕円の哲学」でバランス重視 元首相・大平正芳さん”
だった。
偶然とは言え、何と不思議なタイミングだろう。根っからの唯物論者も神秘主義に宗旨替えするに十分な一撃だ。
尤も、大平さんは政治のバランス感覚の重要性を念頭に「楕円の哲学」を唱えたものであり、当方の「楕円日の丸」は、高級な思想とは無縁の安易な思いつきに過ぎない。実際、このメールニュースを見なければ二度と思い出すことも無かっただろう。
後付けで「楕円日の丸」の正当性を捜すなら、“真円である日の丸は完全性・完璧さを想像させて肩が凝るのに対し、少しひしゃげた楕円は、見る人をリラックスさせ、親近感を醸し出す”といったところか。
蛇足だが、楕円には安定感も備わっている。多少揺らしても元の水平に戻るだろうという安心感だ。真円には、転がしたら止まらないというイメージがある。定位置での回転も止まらない感じがする。安定に見えて、実は極端に動き易い形とも言える。
屁理屈を捏ねていると、本当に「楕円日の丸」が平和日本の国旗に相応しいデザインに思えてくる。大平さんのお墨付きで。
ところで、世界に二百か国もあると、既に楕円を国旗の意匠に使っている国があるかも知れないな。