「希望の島」初出誌として取り上げた(2015/7/26(日))明治時代の音楽雑誌≪音楽界≫は、実は3年前に当欄登場済みであった。気付いた切っ掛けは、同誌の第2巻9号に載っていた楽譜「田家の秋」の作曲者名“米花園楽人”である。この風変わりな筆名が枯れかけた貧脳を覚醒させた。自サイト内検索で、“ロシア民謡~日本へ~明治時代 2012/6/1(金)”に次の一文を見出した:
“たまたま滝廉太郎の絡みで目を通した山本正夫編著「古今名曲集」(明治43年 音楽社)に、露西亜民謡(歌曲)として、「夏の森げしき」(米花園楽人(山本正夫?)・作歌)と「あだなみ」(昇曙夢・譯歌(作歌))の2曲が採録されている。”
山本正夫の名は、同誌広告ページに大見出しで踊っている。「古今名曲集」もその著作の一つとして列記されている。そもそも、彼は既述の通り、同誌の発行名義人である。彼に関わる話題と略歴などを“「日本に捧ぐる歌」~「日本に捧ぐ」~山本正夫 2012/4/1(日)”に掲載した。
今回お目に掛かった山本の作曲「田家の秋」(旗野士良 作歌)は、ニ長調2/2拍子、Allegro愉快にと指示されており、題名の通り素朴な歌詞である:
第壹章 山々色づき 田畑も黄ばみ
ながめは何處も 賑々しさや
お鴉は噪ぎて 柿の実赤く
里の子は喜ぶ 祭りの太鼓
第貮章 刈り田の男の子の 歌声どよみ
秋立つ夕ぐれ いづこも忙し
山の端に残りし 日影は趨しり
畦路に牛追ふ 童もいそぐ
出だし“ヤマヤマイロヅ(キ)”のメロディーは、井上赳作曲「蛍」の“ホタルノヤドハ”と同じである。勿論「蛍」の方が新しい。