“本書は、うたごえバス、フォーク酒場、コミュニティ・ラジオ、映画音楽サークルを訪ね歩き、人生の実りの時を迎えた「ふつうの中高年」への質的調査を通じ、聴覚の個人史と文化的記憶が交わる
想起のかたちを明らかにしたフィールドワークである。”
想起のかたちを明らかにしたフィールドワークである。”
目次で見ると(抄):
“ 第I部消費と再構築――ノスタルジア市場と文化的記憶
第一章走る走馬灯――うたごえバス
1 走るうたごえ――歌で振り返る昭和の東京
2 「なつメロ」なのに「うたごえ」の不思議
3 サウンドスケープ・記憶・メディア
第二章「あの頃」という名の駅――フォーク酒場
1 九州四都物語―前編
2 九州四都物語―後編
3 思い出ゆきの旅行案内書(ガイドブック)にまかせ
4 想い出装置としてのフォーク
第II部想起と多声性――身体の記憶、習慣の記憶
第三章音溝の記憶――コミュニティ・ラジオで第二の人生
1 レコード片手に地域デビュー
2 男四人集まれば――生涯最良のサタデーナイト
3 貝塚から松原へ――インターネット・ラジオでの挑戦
第四章耳で聴く映画――彼らはいかにしてサントラを愛するようになったか
第一章走る走馬灯――うたごえバス
1 走るうたごえ――歌で振り返る昭和の東京
2 「なつメロ」なのに「うたごえ」の不思議
3 サウンドスケープ・記憶・メディア
第二章「あの頃」という名の駅――フォーク酒場
1 九州四都物語―前編
2 九州四都物語―後編
3 思い出ゆきの旅行案内書(ガイドブック)にまかせ
4 想い出装置としてのフォーク
第II部想起と多声性――身体の記憶、習慣の記憶
第三章音溝の記憶――コミュニティ・ラジオで第二の人生
1 レコード片手に地域デビュー
2 男四人集まれば――生涯最良のサタデーナイト
3 貝塚から松原へ――インターネット・ラジオでの挑戦
第四章耳で聴く映画――彼らはいかにしてサントラを愛するようになったか
前編:「サントラ」というささやかなサークルの栄華と衰退
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終章音楽とメモリースケープ
1 ノスタルジア市場と老い~”
1 ノスタルジア市場と老い~”
単に“うたごえ”と言えば、労働組合系の運動を指すことが多いらしい。恐らく、その流れから派生したが、政治色、思想色を薄めて、歌そのものを楽しむことに重点を置いたのが“歌声喫茶”なのだろう。当管理人も半世紀以上前に1,2回出入りした。いつもシラケ気分の人種だったためか、雰囲気に馴染めず、深入りすることは無かった。
運動も喫茶もその後下火になったようだ。社会の原動力が政治から経済に移って、労働運動が弱体化したこと、通俗歌の主流も歌謡曲からポピュラー系に移ったことと軌を一にしていると思われる。
ところが、歌声喫茶に通った世代が年金生活に入る頃から復活の動きがみられ、全国に広がったらしい。月1回定期的に開くとか、歌唱指導チームが“うたごえ”を出前するとか、多様な形式で行われているらしい。喫茶とは限らず、バー、酒場のこともあるようだ。
もっと若い世代は、フォーク酒場、ロック酒場に群れるらしい。これらは、ステージで演奏することを目的に腕自慢が集まる。客全員が一つの歌を斉唱する“うたごえ”とは異質だ。
いずれにしても、同好の士(男女)が集団で昔の歌を楽しむ現象だ。独りで歌ったり、弾いたりする楽しみ方は本書の考察するところではない。集団性に着目して、懐メロを“パーソナル、コミューニティ、スタンダード”(だったかな?)に三分する著者独特の切り口も面白い。
“うたごえバス”なる都内観光バスが運行されていることは知らなかった。もう5年ほど前に始まったらしい。初めは何かの記念で単発企画だったが、希望者が殺到したので、未だに続けており、リピーターもいらっしゃったりして、レギュラー商品となっているとか。昔のガイドさんが動員され、これがまた人気なのだそうだ。歌が古いだけでなく、皆で歌う舞台づくりも大切という訳だ。
フォーク酒場の方は、20,30代など若いグループとの接点を設ける店もあるという。こうなれば、気心の知れた内輪だけのネクラ的イメージが無い。懐メロが次の世代に歌い継がれて、生きた文化遺産として定着する可能性が期待できる。
忘却の彼方に埋もれた古い歌を発掘して紹介する我らが企画にも同じような道が開けないものか。(著作権法の硬直した運用が重大な障碍の一つだ。)