数字と音楽を趣味とする閑人にとって≪猫に鰹節≫のような新聞記事があった:
≪好奇心くすぐる「528の謎」 遠みち近みち 2018年10月6日 日経夕刊 p.10
~ピアニストのスティーヴ・レイマンのCD~副題は「癒(いや)しの周波数528Hz」。ヒーリング音楽として~発売している。~今や国内外で様々な528ヘルツ音楽が作られているのだ。
音の高さは周波数で表される。528ヘルツの音にヒーリング効果があるのだろうか。時報のピッピッピッが440ヘルツだ。ピアノなどの楽器はA(ハ長調のラ)音を440ヘルツに調律するのが一般的だが、それでラシドレと弾いても528ヘルツは出てこない。惜しいのはC(ド)音の523ヘルツ。
A=444ヘルツにするとCが528ヘルツになる。「528の謎」を解くカギはこれだ。~海外の自然療法の医師がグレゴリオ聖歌を分析して発見したという周波数で「愛の周波数」などと呼ばれ~研究の結果、副交感神経に作用することが分かり~
効果については専門家の研究の進展を待ちたいが、~527や529ヘルツではダメなのか。813ヘルツならどうだろう~528の謎を考えていくと楽しい。これもヒーリング効果だろうか。≫
記事の筆者は整数528に拘っている。“ピアノなどの楽器はA(ハ長調のラ)音を440ヘルツに調律するのが一般的だが、それでラシドレと弾いても528ヘルツは出てこない”とした上で、“惜しいのはC(ド)音の523ヘルツ”と述べる。
この議論は平均律を前提としていることは明らかだから、前段は問題無いが、後段はやや曖昧な印象である。基準音A(ハ長調のラ)を440ヘルツとする平均律では、A以外の音の周波数は整数にはならず、無限小数で表わされるからだ。
ちなみに、C(ド)音の“523ヘルツ”としているところ、正確には“523.25…,ヘルツ”である。
癒し、あるいは、ヒーリングの観点から議論するなら、平均律ではなく純正律を前提とするべきではないだろうか。純正律は、聴いて心地よい、良くハモる音階を生み出すのだから。
そこで、純正律の音階の周波数の表を見ると次のようになっている(ウィキペディア):
Name | C | D | E | F | G | A | B | C |
Ratio | 1/1 | 9/8 | 5/4 | 4/3 | 3/2 | 5/3 | 15/8 | 2/1 |
このAの周波数を440ヘルツとして、Cの周波数を計算すると、440 / (5 / 3) x 2 = 528とピタリ整数の528 が得られる。要するに基準周波数440での純正律ハ長調の(高い)ドの周波数が528なのだ。
そう思えば、528 は謎でも何でもない、と言ってしまうと身も蓋も無いか。
ところで、A = 440ヘルツをドとするイ長調のシGisは 825 (440 x 15 / 8) ヘルツとなるのだが、謎の528 をひっくり返した数字だ。