我が陋室の古本の山の中腹に昔の小学校音楽教科書『初等科音楽四』(文部省 昭和18年)が立て掛けてあった。数年前に古書市で見掛けて買ったものだ。持ち帰ってページをめくったら、8枚4ページ分が破り取られていた。秘かにヴェテラン・バイヤーを自認していた身には耐えがたい屈辱であった。
出品店に抗議したい気持ちはやまやまだが、買い値を考えると大人気ないと思われ、諦めた。商品売買には自己責任(買い手の注意義務)があるとか、無いとか大昔教わった記憶があるのもブレーキになった。
そういうケチのついた買物だから仕舞い込む気にもなれずに何年も放置し、埃を被るに任せてしまったのだが、今日、偶々手に取ってパラパラ通覧した。この季節に歌うことの多い「われは海の子」が載っていたので楽譜を見てびっくりした。
二部合唱譜というのも意外だったが、メロディーを辿っても、お馴染みの歌にならない。同じ歌詞で別ヴァージョンの「われは海の子」があったのかと思った。これは大発見と、低音部も見て、再度びっくり、こちらが主旋律になっていたのだ。
高音部は徹頭徹尾引き立て役、脇役となっている。こんな編曲が昔行われていたとは、信じ難いことだ。しかも、高音部はリズムが違う他、各段落の歌い出しも主旋律の低音部より1拍遅れるという凝りようだ。斬新とは言わないのかも知れないが、当方にとっては大いなる驚きであった。
追記:この古本の買物失敗談は≪初等科音楽四~肇国~ニ律音階 2016/9/10(土)≫に記録済みであった。