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Channel: 愛唱会きらくジャーナル
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異常気象 ~ 解説の焦点 ~ 天気の基礎

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森朗/[]「異常気象はなぜ増えたのか ゼロからわかる天気のしくみ」(祥伝社新書 2017.10)を読んだ。タイトルに惹かれて飛び付いたようなものだ。書評に影響されたのも確かだ。イメージ 1
 
はっきり言って、看板倒れの本だ。副題の≪ゼロからわかる天気のしくみ≫の方が内容を比較的忠実に表している。書名とは、もともとそのようなものなのかな。
 
とにかく、本題の≪異常気象≫に充てられているのは、全二百ページ中、せいぜい四分の一で、内容的にも、集中豪雨、温暖化などを列挙する程度で、≪なぜ≫については甚だ抽象的だ。それは、未だ進行中の現象であるから無理も無いとは言えるが、≪異常気象≫と大上段に構えるからには、全地球的に、現象を包括的に捉えて欲しいものだ。
 
尤も、≪異常気象≫と一口にいうものの、定義ははっきりしないから、人によって受け止め方は違うだろうから、当方が欲張り過ぎているのかも知れない。本書の長所も取り上げるべきだろう:
 
気象、天気に関する基礎知識をまとめて提供してくれている。懐かしい天気図の復習もある。数値予報にも当然触れている。ただし、数値の意味は教えてくれない。
 
コリオリの力について丁寧に説明している。北半球では、低気圧に向かって風が反時計回りに吹き込み、高気圧から時計回りに吹き出すこと、南半球ではそれらが逆向きになることを明示してくれる。
 
ただし、コリオリの力の原理の説明の部分には疑問も感じる。特に、≪緯度に沿った線が直線なのは赤道だけで、たとえば北緯35度の線は曲線で、直線にはなりません≫などの辺りは、前後を含めて、意味不明だ。
 
「三寒四温」は春や秋の規則的な天気サイクルを表わす言葉だと思っていたが、それは誤解であることが指摘されている。実は冬の周期的な寒気襲来にちなんだ用語だそうだ。何十年も間違っていたことに我ながら驚く。
 
本書の文体、表現には、一読で意味を掴みにくい箇所がある。例えば、≪二つ以上の台風がおおむね1000km以上接近している時には≫という所(p.135)では、右往左往させられる。
 
この種の本は、全体を体系的にまとめることが難しいだろうと思われる。細かい話題を並べざるを得ないとか、それらを系統だてて提示するのも難しいとかの問題があるだろう。そのために、全体として散漫な印象を与える危険がある。
 
それならば、タイトルに忠実に、≪異常気象≫に的を絞る方が、書き手も、読み手も幸せなのではないだろうか。

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