図書館から借りたカルロ・ロヴェッリ・著/栗原俊秀・訳「すごい物理学講義」(河出書房新社2017.5)の返却期限が来た。同時期に数冊の予約本が到着するので、全部を読み切ることが出来ず、ちょっと惜しい。
原題はLa realtà non è come ci appare(RealityIs Not What It Seems 真実は見える通りではない)と刺激的であるが、当方の読解するところ、我々が目に見える物事から想像するこの世界の根源的な姿は誤りであって、例えば、空間の中に物体が浮かんでいるような自然観は間違っている。量子同士の関係から空間や時間が生まれるのであり、空間や時間が世界の入れ物として存在するのではない、ということらしい。
この奇妙な世界観は、量子論と相対論とを整合的に統一する理論の一つ、量子重力理論による現時点での理解らしい。もう一つの理論が、超ひも理論らしい。著者によれば、最近の実験物理の知見は、量子重力理論に好意的だとのことである。
宇宙の全長は一千億光年を超えるが、無限ではなく、有限の大きさであるとも述べる。果は無いが有限の大きさであるとは、我々の宇宙についてよく聞かされる説明であり、物理学的には全く正しいこととされている。比喩的に、二次元球面によって説明される。
この比喩が正当であるなら、有限三次元宇宙は多次元(例えば四次元)宇宙に浮かんでいることになる。その多次元宇宙は三次元的には無限大なのだろうか。四次元的には有限なのだろうか。二次元球面を抱擁する三次元世界とは、球体や球殻であると理解されるが、それらは三次元的に有限である。
なお、著者らの提唱するループ量子重力理論によれば、宇宙の始まりとされるビッグ・バンには、その前史があり、一種の輪廻の過程を宇宙は辿るということらしいので、これは受け入れやすい。多宇宙や十一次元などに悩まされなくてもよいらしいのも有難い理論だ。
急ぎ読みで誤解しているかも知れないが、当方的には納得の「すごい物理学講義」であった。