今日も無料優良コンサートを聴く機会に恵まれた:
フレッシュ名曲コンサートキャンペーン ランチタイムコンサート
【テノール】宮里直樹 【ピアノ(伴奏)】水野彰子
山田耕筰/赤とんぼ
小林秀雄/落葉松
レオンカヴァッロ/朝の歌
ドニゼッティ/歌劇「アルバ公爵」より“清らで美しい天使よ”
ドニゼッティ/歌劇「愛の妙薬」より“人知れぬ涙”
ヴェルディ/歌劇「リゴレット」より”女心の歌”
(アンコール)
遠藤「春の流れ」
「オ・ソレ・ミオ」
技術をマスターした歌手の歌唱は、素人歌手を感心させる。「赤とんぼ」は発声練習代わりなのかも知れないが、例えば、歌い出し“yuuyaake koyakeeno”の最初の“y”が明瞭に出ている。あるいは、“小篭に 摘んだは”の“つんだ”を“つーうnだ”など。
しかし、“十五で ねーやーは”の“五”を鼻濁音で歌うのは、行き過ぎだろう。
「赤とんぼ」の終部“止まっているよ 竿の先”が過ぎて、ピアノが止んで、彼が静止すること5秒くらいか、会場が静まり返っていた。拍手が起きなかったのは奇跡のようだ。彼が無伴奏、リタルダンドで“止まっているよ 竿の先”を繰り返したのだ。本当の最後にピアノが合流して来た。ハモリが微妙に完全でないように聞こえたのは気の所為か。
「落葉松」は秀逸だった。曲想を完璧に投影していた。技術と声量の賜物だ。
「朝の歌」は、題名だけでは思い出さなかったが、聴いてみればお馴染みのメロディーだった。そのエンディングの盛り上げの高音が、予期に反し、上がり切らなかった。当方の思い違いかと、後でネット音源を渉猟したところ、かのパヴァロッティも同じだったが、他の有名テノールは我が期待通りの高音だった。僅か1音の差だが、印象の違いは大きい。プロ歌手は、時々のコンディションに応じて、臨機応変の音程を取るのだろう。
プログラムの残り3曲は立派に歌った。当方が望んで得られないsotto voceを上手に使いこなしている。彼には演出の才もある。自然に振る舞いながら、聴衆を楽しませる。体格に相応しい落ち着きは見事だ。
アンコール第1曲は≪本邦(世界?)初演≫を冠して、ロシア詩の邦訳による「春の流れ」という歌。彼の藝大受験時の恩師、遠藤先生の作曲とのこと。客席の先生が紹介された。歌った後で、歌詞を間違えたことを覚られたかもしれないと告白していたが、当方には全く分らなかった。ご本人は、表情などに現れたと認識したのだろう。
ネット検索して、原詩の作者に関する情報を得た:
≪フォードル・イヴァーノヴィチ・チュッチェフ(1803-73) 貴族の家に生まれ、モスクワ大学在学中に作詩をはじめ、訳詩で名をなした。彼の最初の詩集はツルゲーネフの編集によって1854年に出版された。外交官として、20余年をドイツに送ったチュッチェフは、思想的にシェーリングやショーペンハウエルの影響をうけた。彼の詩は象徴主義にせまり、同時代としては破格の技巧を有し、特に自然と人間の心理を描くに巧みで、のちのシムボリストに大きな影響を与えた≫(サイト奇想の庭(温室))
随分楽しませて貰って、キャンペーン対象の≪フレッシュ名曲コンサート≫のティケットを買えば、後ろめたくないのだが。
蛇足、と言っては失礼に当たるかも知れないが、宮里は、ピアノ(伴奏)の水野彰子が昨日“入籍”したとバラした。お相手はNHKの人気ドラマの(出演者?)何某とまで明言していたが、当方には未知の名前だった。