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Channel: 愛唱会きらくジャーナル
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人類の進化 ~ 歌の役割 ~ ポリフォニー起源

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図書館から借りて、返却期限を過ぎ、延滞通知を貰って慌てて読んだ本:
 
ジョーゼフ・ジョルダーニア/著 ・森田稔/訳『人間はなぜ歌うのか? 人類の進化における「うた」の起源』(東京アルク出版企画 2017.4イメージ 1
 

 
≪内容:はじめにポリフォニーがあった。モノフォニーは人類が言語を獲得していく過程で生まれた。
 

訳書版元によるPR:人間はなぜ歌うのか?――音楽とは、人類の進化の過程で、私たちににいったい何をもたらしてくれたのでしょうか。かのチャールズ・ダーウィンは、音楽を「人間の通常の生活に直接の役には立っていない」と評しましたが、そうであれば、私たちはなぜこれほど音楽を、とりわけ「歌」を愛するのでしょうか。
本書は、~専門家のみならず「人類の進化」「音楽の起源」に興味を持つ全ての方々に分かりやすく、また読み物として楽しんで頂ける一冊です。
ぜひ、「音楽進化学」の一端に触れ、人類の太古の合唱歌唱に思いを馳せてみてください。≫

 
歌ないし音楽の力や効能については今更言うまでもない。だから、なぜ歌うのか? とは、妙な設問に思われるが、副題にある≪「うた」の起源≫から、なぜ歌うようになったのか?の意と判る。原題は “Why do people sing?  Music in Human
Evolution” である。
 
全篇通じて、ポリフォニーとモノフォニーの世界的分布及び歴史についての考察が基底を成す。
 
ポリフォニーとは、複数の歌い手が複数の声部を分担して歌う、つまり合唱である。モノフォニーとは、独唱又は複数の歌い手による斉唱である(ただし、一人二重唱とか所謂ユニゾンのような融合形式もある)。
 
著者の所説の要は、≪はじめにポリフォニーがあった≫という点だ。モノフォニーは、そこから退化した状態だと言うのだから、初めて聞けば誰でも「まさか!」と思うだろう。単純なものから複雑なものへと進化するのが当然だとの刷り込みがある。
 
しかし、読み進むうちに、ポリフォニー起源説に折伏されてしまう。太古の、弱肉強食の生存競争時代、人類にとって、集団的歌唱、なかでも和声的歌唱は生き残りの重要な武器であったことが説得力を持って論述される。モノフォニーは勿論、言語さえもそこから発達したとされる。
 
そう言えば、言語は歌から生まれたという説をかなり前に当欄で取り上げたことがあった。著者ジョーゼフ・ジョルダーニアさんのお説は、第一印象ほど突飛ではなさそうだ。
 
人類の世界進出史を説明する有力な2モデル、すなわち、多地域進化モデルと(最近の)アフリカ起源モデルの優劣について、著者は、ポリフォニー分布を基に、前者に軍配を上げている。
 
歌の起源というのは、それほど人類進化上重要な問題であるとされていることに瞠目。

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