弘田(龍太郎)が佐藤(春夫)とのコンビで作曲した「日本の母を頌ふ」を2014/3/17(月)に簡単に紹介した。改めて歌詞を記載する:
毅くやさしき日の本の 母の教を身にしみて
ますら男の子ら生ひ立ちぬ 日の本の母ぞ尊き
君と國とに捧げんと 子等をはぐくみはげまして
老の至るを知らぬなり 日の本の母ぞ畏き
言はず語らずその勲 深く秘むれど愛子らは
戦の庭に證せり 日の本の母ぞゆかしき
まさに軍国の母の理想の姿を表現している。佐藤春夫全集の解説に拠れば、1942年10月1日発行の「日本学芸新聞」第140号に、続いて翌2日「読売報知」に掲載され、詩集「大東亜戦争」(昭和18年2月20日 龍吟社、装幀 藤田嗣治)に収録された。
この歌の“レコード音源の所在は把握した”と書いたが、当方の勘違いで、楽譜しか見つからなかった。資料によれば、テイチクレコード昭和18年1月8日発行(T3400)で、東海林太郎と日本合唱団、帝国管弦楽団の演奏である。
裏面に百田宗治/杉山長谷雄「日本のおかあさま」が、千葉静子・東京子供合唱隊の演奏で収録されているという。こちらは“少国民歌”と冠されている。
一 ネンネンオコロリカアサンノ ヤサシイウタヲキキナガラ
オホキクナッタボクラデス ワタクシタチデスオカアサン
ホントニホントニアリガタウ
二 いえいえみんなはおくにの子 とうあのそらになりひびく
とうさんがたのくつのおと みんなでしっかりうけついで
つよい子よい子になるのです
三 サウデスカアサンボクタチハ ワタクシタチハニッポンノ
ゲンキナツヨイコドモデス ミンナデオクニノヤクニタチ
カアサンダイジニマモリマス
四 うみよりふかくやまよりも たかいめぐみのおかあさん
たふといをしえわすれずに わたくしたちはすすみます
ほんとにほんとにありがたう
軍国の母の教を守り、子供たちは“オクニノヤクニタツ”決意を表明する内容で、“とうあのそらになりひびく とうさんがたのくつのおと”が恐ろしい響きを持つ。
しかし、曲はハ短調(3♭)のおとなしい童謡調だ。“元気にしっかりと、然し愛らしく”歌うようにと複雑な指示がなされている。