図書館に申し込んでおいた「目に見える世界は幻想か?物理学の思考法」(松原隆彦、光文社新書 2017.2.15)の順番が漸く回って来た。発行もとの紹介文は次の通り:
≪現代の物理学は、人間の思考を根底から支配している常識を捨て去ることで進展してきた。天上世界と地上世界は同じ法則によって動いていることを明らかにしたニュートン。時間や空間が誰にとっても同じものではないことを示し、世界の見方を変えたアインシュタインetc.
人間の見た目通りの世界は、本当の世界の姿なのか。人間の存在は、その物理的世界の中でどのような位置を占めているのか。
近代物理学の誕生の経緯、そして物理学に大きな革命をもたらした量子論と相対論の成り立ちを概観。物理学とは、常識に対する挑戦である――。日々の生活のヒントにもなる、数式・図表を用いない物理学の入門書≫
読了してから目にした紹介文は、正直で、誇大宣伝の弊は無い。ただし、≪日々の生活のヒントにもなる≫かどうか、凡人たる当方には自信が無い。
始めから終わりまで概論の連続なので、確かに抵抗なく読める。その裏返しのようだが、問題の結論を抽象的に呈示する傾向が、特に始めの方に色濃く感じられる。全体を通して哲学論、観念論の印象も強い。
量子論の説明は、今までに読んだ類書には無い、独特のもので、なるほどと腑に落ちた。
アヴォガドロ定数というと、60年近くも前の高校時代を懐かしく思い出すのだが、これの説明が随分丁寧なのも印象に残る。文章表現には疑問も湧いたが、その理解が重要であるとのお考えだろう。