先日、図書館から予約本が用意できたとのEメールが有り、受け取ったのが≪三瓶政一朗『日本童謡全集』1974音楽之友社≫だった。予約を入れて日が経つと、その本が何故必要なのかを忘れてしまう。ページをパラパラ捲るうちに思い出すこともあるが、今回は全く心当たりが無かった。
目次を眺めていたら「椰子の実」が目に付いた。あれは童謡だったかなと怪訝に思い、よく見ると作者は島崎藤村/大中寅二ではなく、加藤まさを/佐々木すぐるとあり、お馴染みの歌とは別モノと判った。
本文ページを開くと歌詞とメロディー譜が載っており、大正11年と付記されている。![イメージ 1]()
本家「椰子の実」は≪1901年(明治34年)8月に刊行された詩集「落梅集」に収録されている。1936年(昭和11年)~ 7月9日には曲が完成した。7月13日から東海林太郎の歌唱で~さらに~二葉あき子~多田不二子~柴田秀子がそれぞれ放送した。~12月には東海林太郎の歌唱でポリドールレコードから発売された≫(ウィキペディア)。
加藤/佐々木の「椰子の実」は、別資料によれば、上記大正11年より早く≪青い鳥樂譜, 第77篇 佐々木すぐる, 1928.6≫として発表されたとのことで、藤村の詩の発表から27年後である。歌曲としては本家に先立つこと8年である。
歌詞は“磯を離れた椰子の実は 波にゆられて 海の果”と始まる。藤村の詩想の影響下にあると見てよいだろう。後半はさすがに別世界に飛び、“月の まどろむ 春の宵 夢に 人魚の歌を きく”と結ぶ。七五調4連の短い歌詞である。
レコードも発売された(曾我直子、レーベル ヒコーキ)そうだから、一応世に知られた歌だったと思われる。昭和5年発行『世界音楽全集17「日本唱歌集」』にも採録されてるとのことである(d-score)。