一昨日買い込んだ古楽譜の中に、高橋掬太郎/弘田龍太郎「富士は微笑む」というのがある。昭和18年11月の発行だから、戦争たけなわ、国全体が戦争遂行だけのために存在していたような時代に作られた歌だ。
どんな勇ましい軍歌調かと思って歌詞を見ると、予想に反して、何とも長閑な文句が並んでいる。検閲に合格するよう国民の御奉公を督励する掛け声の繰り返しはあるが、あからさまな戦意昂揚の表現は無い。“ハンマー”など、敵性語ではなかったのかなあ。
曲も、このような歌詞に呼応するかのように、民謡あるいは俗謡を思わせる長閑な趣きである。これで≪大日本産業報国会制定≫とされたのは、未だ日米開戦1年足らずで、国全体に気分的にゆとりがあったことを示しているのか。因みに、楽譜初出は、國民の音楽 第3巻第7号(1943年7月)のようである。
ネット検索すると、レコードが少なからずオークションに出品されているのが判る。しかし、音源をアップしているサイトは見当たらず、公的施設の所蔵情報も無い。レコード諸元は次の通り:
富士は微笑む | 渡辺はま子 波平暁男 | 1943.10 | 体育民踊 産業向盤 |
レーベルはコロムビアあるいはニッチク