本郷から乗った東京駅行きのバスがお茶の水に着き、運転手が“暫く停車します”と言って、開いた降車口の方に歩いて来た。ドアの外に目を遣ると、何と、バスが後退しているではないか。乗客がざわつき、後続車の警笛が鳴り、運転手も気付いて直ちに取って返し、サイドブレーキを引いた。軽い衝撃とブレーキの締め付け音があったが、危うく追突事故は免れた。落ち着いたところで運転手さん、バスを正しい停車位置に戻した。
運転手が席を離れたのは、車いすの乗客を降ろす段差プレートを掛ける為だった。意識がそちらに集中して、サイドブレーキを忘れたのだろうか。プロでもこんな初歩的なポカをやらかすことがあると判った。平坦に見える場所でも、意外に傾斜のついていることがあるという教訓も。結果的には何事も無かったかの如く、バスは平和に走り続けた。
平和の象徴の如きハトだが、野生動物の弱肉強食の世界では餌食となることが多い。猫やカラスに食われる場面を幾たびか見てきた。きょうの捕食者は、誰であったか、血肉の付いた羽が散らかっていた。その名もカラスザンショウの大木の真下で、日頃ハトたちが上にも下にも群れている場所だ。休憩所にしたり、カラスザンショウの実を啄んだりしている。猫の姿もよく見掛ける。
頭や骨が近くに見当たらないのは、御馳走は人目に付かない場所で落ち着いて賞味するからか。カラスも、ハトも、猫も、童謡では可愛く歌われる。闘争は歌題にはなりにくいだろうなあ。