ラッセル(注)のパラドクスとは、≪自分自身を要素として含まない集合全体の集合Rの存在から矛盾が導かれるという、素朴集合論におけるパラドックスである。いまRがRに含まれると仮定すると、Rの定義よりRはRに含まれないから、これは不合理である。したがって(仮定無しで)RはRに含まれない。ところがRの定義よりRがRに含まれるから、やはり不合理である≫(ウィキペディアの記述を縮約)
この解説はややこしくて、直感的に納得し難い嫌いがあるが、ラッセルのパラドクスは、集合の集合として、≪それ自身を含む集合≫なるものを想定することから導かれると考えられる。≪それ自身を含む集合≫というナンセンスな概念を持ち込まなければこの矛盾は生じない。
そもそも、ある集合を定義しようとする時に、その集合自身を含めるということは、未だ定義されていない集合を定義成立の条件としているので、定義自体が成り立たない。つまり、無効である。
≪それ自身を含む集合≫という無効な概念を基にした推論は無効であるから、パラドクスそのものが幻想である。他愛の無い幻想に世界の大数学者たちが狼狽えたというのも腑に落ちない。ということは、このパラドクスの厳密な記述は少し違うのではないかとも思われる。
世に出回る≪床屋のパラドクス≫など各種のヴァージョンは、素人に解り易くした例え話であって、厳密性を欠くのかも知れない。しかし、床屋ヴァージョンがラッセル自身のオリジナルの記述であるとの解説も見受けるので、当方は混迷するばかりだ。
(注) ラッセル:バートランド・アーサー・ウィリアム・ラッセル(英: Bertrand Arthur